- ガルバリウム鋼板/次世代ガルバリウム鋼板(SGL®)
- トタン
- アルミサイディング
- ステンレス鋼板
断熱性や耐震性重視なら金属サイディング!
種類や特徴、選び方を解説
軽量のため建物への負担が少なく、耐震性が高いといわれているなど、その特性から外壁材としてのシェアを拡大している金属サイディング。一方で、コストに対する懸念などから採用を躊躇している方もいるのではないでしょうか。有力な選択肢のひとつとして、そのメリット・デメリットやメンテナンス方法などについて解説します。
建物の表情を決める、外壁材。
暖かみのあるイメージの木質系、シャープな印象を与える金属系など、どのような壁材を使うかによって建物のイメージが大きく変わります。また使用する外壁材は、外観だけではなく建物の耐震性や断熱性などの性能にも大きな影響を及ぼします。
ここでは、軽量でスタイリッシュなだけでなく、メンテナンスにもアドバンテージがある「金属サイディング」について解説します。
軽量で凍害にも強い金属サイディング
日本での外壁材シェアナンバーワンは窯業系サイディングですが、これは新築に限ったことであり、リフォームでサイディングを採用する場合のシェアを占めるのは、じつはこの金属サイディング。
素材となる金属の特性が生かされた金属サイディングの一番のメリットは、軽量であること。同じ強さの揺れを受けた場合、屋根や外壁が軽量であればあるほど柱や梁などに加わる負荷を抑えることができ、地震などの災害に対する耐力にも直結します。
また、金属が「水を通さない素材」であることも特長のひとつ。
国内シェアの高い窯業系サイディングはセメントを主原料としており、水分を吸収するセメントは塗装が劣化して基材が吸水すると冬期に凍結・融解を繰り返し、剥離やひび割れなどの凍害を引き起こすことがあります。しかしながら、金属サイディングはセメントを使用しておらず、このような凍害が発生することはありません。
水を吸水しないため凍害を起こさないということは、金属サイディングの大きな特長です。
金属サイディングの種類はおもに4つ
外壁材や屋根材として一般的に使われる主要な金属のサイディングは4種類。
金属サイディングといっても、その素材によって特性はさまざま。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ガルバリウム鋼板/次世代ガルバリウム鋼板(SGL®):金属サイディングで一般的
鋼板にアルミと亜鉛の合金でメッキ加工を施したもの。
価格と施工性、耐久性などのバランスが取れていて、金属サイディングの中でもっとも広く普及している建材です。窯業系サイディングにくらべて軽く、高い耐食性を備えています。
また、SGL®、通称「次世代ガルバリウム鋼板」と呼ばれる製品も出てきました。SGL®はこれまでサビに弱いとされてきた金属サイディングにくらべ、技術開発でメッキ層を強化したことにより、これまでのガルバリウム鋼板の3倍となる、非常に高い耐食性の実現に成功しました。要するに「サビに強い金属サイディング」が誕生したということであり、このSGL®の出現によって外壁材の選択肢が広まったといっていいでしょう。
トタン:DIYにも用いられ安価で加工しやすい
亜鉛メッキ加工された鋼板です。安価で加工しやすく、とくに「波板」とも呼ばれる波型に加工されたトタン板は加工性に優れた建材として広く使われてきましたが、住宅用建材としてより性能の高いガルバリウム鋼板などにシェアを譲っています。コスト優位性を生かして倉庫や工場などで活用されているほか、加工のしやすさからDIYにも用いられています。
アルミサイディング:ほかの素材よりも軽くてサビにくい
アルミサイディングは、ベースとなる鋼板に鉄よりも軽量なアルミニウムを使用した建材です。ガルバリウム鋼板よりも古くから外壁材として用いられてきましたが、商品価格が高いため、そのシェアはガルバリウム鋼板に押されています。近年では、耐久性やメンテナンス性が向上した新商品などが市場に投入され、メリットが見直されている建材のひとつです
ステンレス鋼板:ほかの素材よりも高いがメンテが少なく済む
鉄とクロムの合金、ステンレスを使用した建材です。サビや高温に強いといったステンレスの特性がそのまま生かされ、耐久性に優れ加工が容易、頻繁なメンテナンスが不要であるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、デメリットとなるのがその価格。4種類の金属系サイディングの中では、もっとも高価な建材となります。
外壁を金属サイディングにするメリット
金属サイディングのメリットはその軽さだけではありません。じつは窯業系サイディングとくらべても、断熱性や防音性などにも優れた建材です。この特性は、外壁材としての適性が非常に高いことを示しています。外壁材として有用とされる具体的なメリットを見てみましょう。
断熱材と一体になっているので断熱性に優れている
金属は一般的に熱伝導率が高く、断熱性能は低いと思われがちですが、建材として製品化された金属サイディングに至ってはそうではありません。たとえば、外壁材として広く普及しているガルバリウム鋼板の断熱性は、窯業系サイディングを上回ります。このため金属が持つ「熱伝導率が高い」というデメリットが打ち消され、窯業系サイディングをしのぐ断熱効果を生んでいます。
素材が軽くひび割れにくいので耐震性が高まる
素材が軽量であることも建材としての大きなメリットです。一般に屋根や外壁などが軽ければ軽いほど、地震に対する強さは高まります。外壁材が重ければ揺れによって柱に掛かる負荷は大きくなり、建物に対するダメージに直結します。
カバー工法にすれば凍害に強く防音性が高まる
既存の壁の外側に新たな外壁材を重ね張りする「カバー工法」。住宅のリフォームなどで広く用いられ、軽量で水に強い金属サイディングはこの工法に適した建材です。従来の壁の上に新たな外壁を加えるため防音性の向上が見込まれ、金属サイディングによって従来の外壁が守られるうえに、壁の間に生まれた空気層は凍害の防止や断熱性の向上にも効果的です。
施工しやすく工事期間が短くて済む
外壁材として成形されて出荷される製品なので、現場での施工が容易で工期を短縮できるのもメリット。とくにリフォーム工事では、住みながらの施工にしても、一度転居をするにしても、工事期間が短いことのメリットは計り知れません。
ただし、窯業系サイディングと異なり、金属加工に精通した専門の施工業者を選ぶことが大切です。
外壁を金属サイディングにするデメリット
外壁材としてメリットの多い金属サイディングですが、デメリットが皆無、というわけではありません。ベースとなる金属の性質から、その長所とともに短所も受け継いでいます。
デメリットもふまえたうえで、最適な外壁材を選ぶことがポイントです。
塩害のある海沿いにはサビに強いものを選ぶ
金属素材という性質上、避けられないのがサビのリスク。もちろんメッキ加工や塗装によってサビにくくなる、あるいはサビたとしても腐食が拡大しにくい性質を有してはいますが「塩害」が発生する地域などでは建材にサビが生じる可能性も高まります。
海に近いエリアなど一般に塩害のおそれが高い地域で外壁を選ぶのであれば、サビを考慮する必要がない樹脂サイディングの方が適していますが「塩害も気になるが外壁に金属サイディングを採用したい」という場合には、サビに強いSGL(次世代ガルバリウム鋼板)がオススメです。
塩害に強い樹脂サイディングはこちら
サビに強い金属サイディング、SGL®についてもっと詳しく知りたい方はこちら
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衝撃があると変形したり傷がついたりしやすい
また、これも金属の特性ですが、衝撃によって変形したり傷がついたりするなどのおそれがあります。ただし、窯業系サイディングなどでも衝撃によって割れたりするリスクが存在しますので、単純に「金属系は窯業系にくらべて強度に不安がある」という解釈ではありません。「衝撃に対して生じる被害の形が異なる」と認識しておきましょう。
施工できる技術者が限定される
外壁といっても窯業系サイディングとはその特性が大きく異なるため、金属サイディングの取り扱いに慣れた施工業者を選ぶ必要があります。
具体的には、金属加工に優れた専門の板金加工業者。単に外壁の施工をしているというだけでなく、金属加工に焦点を当てて選定すれば、間違いのない施工業者選びができるでしょう。
ほかのサイディングと比較すると初期費用が高い
トタン波板のような簡易的な金属サイディングを除き、住宅などで一般的に用いられるガルバリウム鋼板などは窯業系サイディングと比較して初期費用が高くなりがちです。これは製品そのものの価格によるところが大きく、窯業系サイディングの1平方メートル当たりの単価が5,000円〜7,000円であるのに対し、ガルバリウム鋼板では5,000円〜1万円を見込む必要があります。
【早見表】
金属サイディングとほかのサイディングとの違い
サイディング材には、金属サイディングのほかにも「窯業系サイディング」や「樹脂サイディング」などの種類があります。
セメントを主原料にして成形された水に弱い窯業系サイディングと比較すると、水に強い金属サイディングは金属自体の性質やメッキ加工のおかげで塗装の頻度は少なくて済みます。ただし、セメント自体が一定の厚みを持つ窯業系サイディングは表面の凹凸などの表現がしやすい特性を持ち、デザインのバリエーションが豊富であるというメリットがあります。
またアメリカやカナダなどで主流の樹脂サイディングについては、耐久年数が長く金属サイディングがもっとも苦手とするサビに強いといった特徴がありますが、一方で日本にはまだ施工できる業者が少ないといった点もあげられます。
金属サイディングがオススメのケース
金属サイディングのメリット・デメリットをふまえたうえで、その特性をより生かすことができるのは、凍害対策や断熱性能の高さを必要とする寒冷地などです。また、耐震性の向上にも役立つため、地震に対する備えを重視したい方にはオススメです。
寒冷地に住んでいるもしくは住宅を建築予定
凍害のリスクの高い寒冷地では、金属サイディングは高い適性を有した外壁材です。窯業系サイディングや塗り壁などセメントを含有する外壁では、建材の内部に浸透した水分が凍結によって膨張し、剥離やひび割れなどが発生するリスクがあります。その点、金属サイディングは水分が浸透しないので、凍害に対しては高い効果が期待できます。
防音や遮熱性が高い住宅にしたい
外壁を金属サイディングにするメリットでもお伝えした通り、直張りの場合の金属サイディングの防音性や断熱性は高いです。窯業系サイディングと比較しても高い防音性を遜色ないことが実証されています。なので「寒冷地に住んでおり断熱性を確保したい」「シアタールームを設置したいから防音性の高い家にしたい」などの希望があれば、この金属サイディングはオススメです。
耐震性を重視している
外壁材自体が軽量な金属サイディングは、地震の際の揺れなどで建物に与えるダメージが少なく、軽量であることが耐震性能の向上に直結しています。そのため金属サイディングは、耐震性能を少しでも上げたいとお考えの方にオススメです。
金属サイディングのメンテナンスや耐久年数
サイディングを手で触った時に白い粉(チョーキング)がついたり、塗膜の膨れなどが見られたりした場合には塗装の劣化が進んでおり、塗り替えが必要となります。また、サイディング表面にカビや藻が発生することがありますが、周辺環境に合わせて適切なタイミングで清掃やメンテナンスを行うことで、金属サイディングの耐久性を維持することができます。
期待耐用年数は10年から15年ほど
金属サイディングの期待耐用年数は10年〜15年といわれています。しかし、不動産の立地条件や建てられてから発生した地震などの被災状況、そしてメンテナンスの実施状況など、さまざまな要因によって大きく変わってくるのが実情です。また30年~40年というのは、あくまでも金属自体の期待耐用年数。表面の塗装などはよりはやいスパンで劣化しますから、その都度適切なメンテナンスを行うことがポイントです。
10年~15年に一度メンテナンスを行う必要がある
金属サイディングとはいえ、表面の塗装の劣化にともなって定期的な塗装が必要となります。
金属サイディングの場合、劣化しやすいシーリング材は窯業系サイディングと違い露出部分が少ないため、定期的に壁を洗う程度のメンテナンスを行うことで、より長持ちします。一般的に10年〜15年のサイクルがひとつの目安となりますが、傷などによりメッキや塗装が損傷した場合には、そこから金属そのものの腐食が進むおそれがあります。表面の傷のほか、サビやチョーキング、塗装の剝がれなどを確認した場合にはこまめにメンテナンスを検討しましょう。
金属サイディングの工法の種類と費用の相場
金属サイディングは新築の際にはもちろんのこと、リフォームの現場でもシェアを拡大しています。建材自体が軽量で施工性が高いことはもちろんですが、窯業系サイディングからの張り替えだけでなく、既存の壁に新たな外壁を重ね張りする「カバー工法」にも、その特性が適しているためです。ここでは「カバー工法」と「張り替え」について、工期や費用なども解説します。
新築|釘留め工法
下地にサイディングボードを釘で直接留める工法を「釘留め工法」といいます。費用を抑えることができる工法です。
リフォーム|カバー工法(重ね張り)
カバー工法は、劣化した窯業系サイディングなどを剥がさずに金属サイディングを重ね張りするリフォーム工法です。一般的な外壁塗装が劣化した防水機能などを復元する意味合いであるのに対し、カバー工法は断熱性や遮音性の向上といった付加価値を生み出します。
必要な工期は3週間〜4週間と、一般的に2週間程度で完了する外壁塗装などよりも長期間に及びます。費用は使用する外壁材の種類によっても異なりますが、外壁の面積1平方メートルあたり1万円〜2万円前後です。これに加え、足場や付帯工事の費用として約20万〜40万円をプラスして見込んでおく必要があります。費用相場としては30坪程度の一般的な住宅の場合、170万円〜200万円ほどの費用となります。
リフォーム|張り替え
既存の外壁材を撤去して新しい壁を張る、張り替え工法では、古い外壁を剥がし内部を補修する工程や撤去した建材の処分費用などが追加されるため、カバー工法にくらべて工期が長く費用も高くなります。カバー工法と比較すると、プラス1週間ほどの期間と、20万〜30万円ほどの追加費用を見込んでおく必要があるでしょう。また、外壁を撤去することで壁内の不具合を目視できるなどの利点があることから、既存の外壁の劣化が著しい場合などには張り替えのリフォームが効果的です。
事例紹介|金属サイディングは汚れの目立たない色がオススメ
従来、金属サイディングは「金属的な質感」をそのままに仕上げられた製品が多かったのですが、現在はさまざまな加工を施された製品が供給されています。窯業系サイディングにくらべて表面の凹凸の表現が不得手とされていましたが、石やタイル、木質系のざらざらした風合いに表面処理された製品も増え、選択の幅が広がりました。カラーによっても大きく家の印象を変えることができます。ただ、色の選択は要注意。金属的な質感とも相性が良いブラックは人気のカラーですが、汚れが目立ちやすいというデメリットもあります。少しだけ彩度を上げ、シャープなイメージであればグレー系、やさしいイメージであれば茶系を選ぶのがオススメです。
クールでシャープなイメージのグレー系
金属質のシャープさが際立つカラーとして人気が高いのはブラックとシルバー。ブラックは重厚感が感じられるものの、汚れが目立つというデメリットがあります。
シルバーは光の加減によっては安っぽく見えてしまうおそれがあるなど、扱いが難しいカラーです。こういった印象の外壁を希望するのであれば、オススメはグレー系。黒ほど汚れが目立たないだけでなく、光の加減によってシャープな印象も重厚感も感じさせるオススメのカラーです。
暖かく優しいイメージの茶系
暖かみのあるカラーをご希望の方にオススメしたいのが茶系です。表面の加工により凹凸を表現した金属系サイディングが増えたことで、木質系やレンガなど「金属を感じさせない」仕上げの製品も多数ラインナップされています。また、茶系のサイディングはアクセントカラーとして使うこともオススメ。ダークグレーの外壁の一部に木質系のサイディングを使うなど、アクセントに用いることによって家全体のデザイン性を高めることができます。
性能は高くメンテナンス費用も抑えられるのでオススメ
ほかの外壁材と比較して耐震性や断熱性、防音性などでアドバンテージを持つ金属系サイディング。さらに意匠性も高く、今後ますますニーズが高まっていくことが予想されます。
初期費用が高めというデメリットはありますが、メンテナンス費用も含めたランニングコストを考慮すれば、結果的に全体の支出は抑えられる可能性もあります。耐食性の高い次世代ガルバリウム鋼板(SGL®)の出現で、サビにくい金属サイディングも増えており選択の幅も広がっています。
また特徴として、スタイリッシュなデザインが多いことや、水を含まない壁材として凍害対策など高い性能も期待できるので、リフォームや新築時にはぜひ検討いただきたい外壁材のひとつです。
ソトカベコラム
編集部