《ラジオ出演》外観と佇まい/SHiZEN座談【後編】
2024/07/01
雑誌 “I’m home.”の大南編集長、一級建築士でありSHiZENプロジェクトにも携わっていただいた井上玄さん、
弊社の商品開発部の細井彰が、FMヨコハマ「商店建築社presents I’m home. ~わたしスタイル~」に出演いたしました。
【前編】に引き続き、今回は【後編】をお届けします。
※以下、敬称略
井上玄(いのうえげん)
住宅や別荘を中心に提案型の設計活動を行うと同時に、建築撮影や大学の非常勤講師などを通して建築の魅力を社会や学生たちに発信している。自分自身の移住体験や多拠点居住の魅力を発信しながら、「これからの暮らしと居の構え方」を模索し、多様化する価値観を包容する新しい建築や緩やかに繋がったまちの在り方を提案している。
ーさて、今週は、アウタールームや、軒下空間に関して伺います!
大南さん、軒下空間は以前このコーナーでもご紹介頂きましたが、どんな空間でしたっけ?
大南 基本的には外部空間なんですが、軒と言って「屋根がはみ出した、雨を避けられるところ」ですね。
ー今回テーマにあります、「アウタールーム」とは一体どんな場所なのでしょうか?
大南 先ほど軒下空間の話をしたんですけれども、この場合は、建物に囲まれた中庭みたいな印象ですかね。
(屋外でありながら)内部空間のように過ごせる場所を「アウタールーム」と言って、そういった場所は今多くなっています。
屋根がないところが多く、ポイントとなるのは、「室内のような過ごし方」が出来るところです。
井上 名前に決まりはなくて、どちらかというと雨をしのげるというよりは、「リビングみたいに長時間を過ごせる外部の場所」の総称を指します。そういう場所が、最近求められていますね。
ー細井さん、「SHiZEN」はそうした外部空間だけでなく、内部にまで連続させることもできると伺ったのですが、
具体的にどのようになるのでしょうか?
細井 人目を気にせず過ごせるリビング空間にするためには、外部の視線が気になりますので、建物の壁を庭まで延長して外周をぐるっと囲ってしまうんです。そうすると、人目を気にせず過ごせる空間になります。
雨や日差しを気にせず過ごせるよう、軒を深くした空間みたいな設計も多く見られます。
「SHiZEN」は、内装材としても使用できますので、リビングの壁から窓を挟んで外部の壁まで連続して張ってあげると、内外が連続した空間だと感じられます。
例えば、室内に居ながら外部の雰囲気を感じたり、外にいながらにしてリビングを感じられたり…。
内外に連続して張ることで、「(つながりを)視覚的に感じられる」のが特徴です。
井上 内と外を一体化させたいという要望も多いです。
(例えば)ガラスだけで区切られていて、視覚的に屋内にいるけれど外の広がりを感じられるような…。
同じ材料を使っていればいるほど、内と外が曖昧じゃないですか。(そういう意味でも)外装材を屋内に使うアイデアはよいと思うんです。
ー「建築家はどんなことを考えながら、外観をデザインしているのか」教えていただけますか。
井上 まず家を建てたい方が私ども設計事務所に「設計してください」と頼まれます。
私たちの業務としては、1軒の家を「そこに住む方の要望を叶えながら設計する」という基本的なスタンスがあります。
ただ、建築家が皆がそうかはわからないです。
僕自身は、「個人の住まいを設計することが、街並みをつくっている」という意識で設計をしていますので、このテーマでお話しするには、まず僕の「思い描く理想の街並み」をお伝えしたいなと思います。
「住まい手の個性」(つまり)暮らし方が街にちょっと出ているような感じで、そういう様々な住まいと街の関係性っていうんですかね。
だから、なんとなく逆パターンで言うと、塀があり誰が住んでいるかわからない、どんな職業で、どういうものが好きかも今の街では全然わからないじゃないですか。
(たとえば)街を歩いていて、車を見ていると少しわかるじゃないですか。
あの方はこういう考え方だから、こういう車に乗っているんだなって。それって個性だと思うんですね。
それなのに、その車の横にある家を見ると、全くその住んでいる人の考え方も趣味趣向、好きなものも想像ができない。
それが、僕は寂しいと思っていて…。
街というのは、例えば近所の人たちが気軽に集まってコミュニケーションできるような、そういう何か…。
例えば今ある道路と敷地の境界であったり、住まいの間の空間、庭であったり、玄関アプローチであったりすると思うんですけど…。
そういうところを、積極的に何かデザインすることかなと思っています。
住まいの外壁もそうですが、プライバシーを守る機能もあるんですけど、もう少しプライバシーをうまく守りながらも「開く」というか、住まい手が街につながっていけるような、そういうことを考えながらデザインをしています。
細井 本当に「人の暮らしっていうのが(街に)表れる」というのはすごくいいなと思いました。
大南 街らしさにもつながりますね。
ー井上さんは、この旭トステム外装さんが開発した外壁ブランド「SHiZEN」を使ってらっしゃるのですが、
「SHiZEN」の良さはどんなところだと思われますか?
井上 そうですね。外壁を選ぶときに、その外壁だけでは選ばないんですね、実は。
家の中のフローリングは何を選ぶのか、ダイニングテーブルにオーク材(といって爽やかで明るいような)ダイニングテーブルを選ぶとか…。フローリングを選ぶのならば、外壁はこういうものを…とトータルで選んでいるので。
例えば、「SHiZEN」のOBOROという商品は、グレーやブラックなど色のバリエーションがあるんですね。
そうすると家を建てたい方が「明るいオークのフローリングが好みです」と言われた時に、それであればOBOROのライトグレー(オボログレー)を組み合わせると、セメントの色とオークの明るい木の色がマッチしますよ、という風にご提案します。
逆に、重厚感を求める方もいらっしゃるじゃないですか。
材料でいうと、例えばウォールナットとか、そういう少し暗めのフローリングを選ばれる方なんかは、OBOROのブラック(オボロブラック)を組み合わせていくと、そういうインテリアとも合います。
「SHiZEN」は、インテリアと合わせることを想定して、外壁の色を作っていると感じるのですごく使いやすいですし、僕は、そういう基準で色を選んでいます。
細井 「SHiZEN」は(色の)トーンを揃えてるので、いろんな素材と合わせやすく落ち着いた印象になっているのかなと思いますね。
ー今週は、井上さんが実際に外壁材「SHiZEN」を使われたお宅の話しを伺ってまいりたいと思います。
井上さん、印象的だったお宅というのはありますか?
井上 そうですね、これからの新しい住まいの形だなというのが「サッカーグラウンドが庭にある」お宅です。
実は二階建ての二階部分が住宅になっていて、一階はサッカーをする子たちの集まる場所、寺子屋みたいなものが一階にある住宅なんですね。今までにない、住宅プラスαの機能が付いているこれからの住宅の形の一つかなと思いますし、外観、外壁をデザインするにあたって、僕たち建築家っていうのは、中の構成をそのまま外観として表すということを意識しているんですね。
具体的に言いますと、住宅の部分はOBOROのグレー(オボログレー)で、下の寺子屋の部分はクロ(オボロブラック)にするとか…そういう色を使い分ける理由も考えています。
住宅の構成と外壁の色をマッチさせた住宅が逗子にあるのですが、それが印象に残っていますね。
ーそのお住まいの、お施主さんから外観や外壁にどのようなリクエストがあったのでしょうか?
井上 こちらのお施主さんに限ったことではないのですが、やはりメンテナンス性の高いものを選んで欲しいということがありました。
あとは、子どもたちが集まってくる場所なので、馴染みやすいデザイン性の高いものを選んで欲しいという。
その部分は抽象的なご要望だったので、それを踏まえて「SHiZEN」のサンプルを持ってご説明したということですね。
ーそれで納得されて、これは良いですね!ということで使われた。
井上 そうですね。工場で塗装されているので耐久性が高いということも、やはり実際にメンテナンスの費用を払うのは住まい手の皆さんなので、すごく大きい要因だったと思います。
それに相反してかっこ悪くなってしまうと採用には至らないと思うんですけど、「SHiZEN」はデザイン性と機能性の両立のバランスがすごく取れているので、お客様にもスムーズに理解していただいて、使ったという経緯ですね。
ーその他にも、井上さんが携わった外壁材「SHiZEN」を使ったお宅はありますか?
井上 そうですね。僕らが住まいの外壁を考える場合に、例えばブラインドが閉まっていることって多いじゃないですか。
要するに住宅街に家が建っていると、大きい窓を建ててもお向かいさんから見られてしまうのでブラインドを(閉める)。
そうなってしまうと大きい窓を作っている意味もないので、「外壁がプライバシーを守る壁も兼ねる」というような、
最低限の外壁の機能を超えた、室内のブラインド機能も外壁でやってしまう、みたいなことを考えたことがあって…。
それは横浜市の中川にあるのですが、室内からは開放的で壁の裏が見えるので、外壁がインテリアに見えます。
それも「SHiZEN」の特長のひとつです。
ーなんと、外壁がインテリアになると!
井上 あとはですね、ちょっと違った用途で、一棟貸しのヴィラにも(「SHiZEN」を)使っていて、そこではやはり非日常性を求められるんですね。
日常から離れたいので別荘を一泊借りて…という建物なので、非日常的な高級感を演出する一棟貸しのヴィラにも使わせていただきました。
細井「SHiZEN」の施工事例集にも、この物件が載っているんです。ぜひチェックしていただきたいですね。
ー細井さんのメーカーさんの目線で、最近の住宅外観には、どのような傾向があると感じられますか?
細井 そうですね。昔もシンプルモダン住宅は流行ったのですが、最近もシンプルで箱型のフォルムの住宅や、コの字型のコートハウスといったスタイリッシュな住宅がかなり多く見られるなと。
プライバシーもあるので、外に閉じて内に開く。
先ほど井上さんからも「大きい窓を作っても、それが使えないのでは意味がないよ」とありましたけれど、そのようなことからも「道路側に窓が少ない外観」というのは結構多いなと感じています。
ーそういったお話しを聞くと、新築のお宅は今仰ったような感じが多いですね。
細井 色についても、以前は真っ白だとか、ここ数年だと真っ黒という外観が結構多かったのですが、最近はグレーがかなり増えてきているなという印象です。
シンプルながら素材感があるものだとか、中間色のグレーで外壁を仕上げたような、上質な外観というのが増えているなと感じます。
井上 グレージュとかね、よくインテリアで出てくる。
大南 そうですね、インテリアとリンクしているかもしれないですね。
ーということで、上質なデザインと暮らしを考えるハイエンドなホームデザイン&ライフスタイル誌“I’m home.”の大南編集長、そしてLIXILグループ旭トステム外装株式会社から、商品開発部の細井彰さん。横浜出身の一級建築士、井上玄さんをお迎えしてお話を伺いました!
皆様、どうもありがとうございました。
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