SHiZEN×PROJECT

歴史を紐解けば見えてくる!?
これからの住宅と、外壁の新しいカタチ

2021/03/30

社会情勢やそれに伴う人々の価値観の変化は、住宅のあり方に影響を与えてきました。
戦後の日本の流れを簡単に振り返りながら、これからの外壁の新しいカタチを予測してみましょう。

社会の変化とともに、住宅外観の流行は移り変わってきました

1940年代頃、戦後の住宅不足の状況下において日本では住宅の工業化が進み、プレハブ住宅が大量生産されます。高度経済成長期にはマイホームの建設が急増し、その後に続く学歴社会の風潮は、勉強部屋としての子ども部屋の需要へと繋がっていきます。また、子ども部屋は2階に増設されたことから、2階建住宅が主流となっていきました。

1980年代に入ると、オイルショックによりプレハブ住宅市場は落ち込みを見せます。すると住宅メーカーは競合他社との差別化を図るため、住宅の「商品化」に力を入れるように。1980年代のアーリーアメリカンテイストや1990年代のブリティッシュ、それに続く南欧スタイルやシンプルモダンと住宅外観の流行は変遷し、それに伴い外壁材にも多種多様なバリエーションが誕生しました。

家族形態やライフスタイルは、内側から住宅を変えています

一方、引きこもりなどの社会問題やリビング学習と子供の学力の関係など、住宅の間取りが及ぼす影響も指摘されるようになります。プレハブ住宅の大量生産とともに生まれた画一的な間取りは、時代にそぐわないものとなってきました。

昨今ではリア充ならぬ「リビ充」というワードがトレンドになるなど、家庭が緩やかに繋がりながらも、思い思いの時間を過ごす場所が住宅の中心になってきています。家族形態やライフスタイルの変化に対応できる間取りの必要性は、住宅を内側から変えてきているのです。

コロナ禍で加速した、プライベートな屋外空間の必要性

リビングの充実が求められる中、ベランダやテラスなどの屋外空間をリビングの延長として活用する流れは、コロナ禍の巣篭もりで加速的に広がりを見せています。アウトドアリビングやリビングテラスなどの言葉もポピュラーになりつつある今、「室内」と「屋外」の新しい関係は外壁と関わりの深いもの。室内のような外部空間に必要となってくるのは、内と外を心地良く繋ぐことができる、外壁の存在ではないでしょうか。

街との繋がり、街との境界の変化

日本の住宅外観は、社会の変化やそれに伴う流行、さらに価値観や好みの多様化により多種多様な様相を呈してきました。それぞれの家の顔として主張してきた外壁は、一方で街並みを形成する要素でもあります。街並みに対する意識の成熟は、地域の歴史や自然景観、近隣との調和に及びます。外壁に求められる役割にも、調和が大切になってくるのではないでしょうか。
また、美しい街並みだけではなく、イキイキと活気のある街を作っていくためには「人」が主役になることは欠かせません。住宅が街に対して閉じた状態では、街並みは冷たい印象になるでしょう。例えば軒先に、袖壁と一体になったベンチがあれば、ご近所さんとの会話が生まれやすくなるかもしれません。段階的に街と繋がることで暮らしの息吹を感じさせ、人の活動を魅力的に引き立てる、そんな外壁のあり方が必要になってくるのかもしれません。



新型コロナに、環境問題、少子高齢化社会にSDGs・・・、私たちを取り巻くこれからの社会の動きは、外壁の新しいカタチにつながっていくかもしれませんね。